## 50歳はドライバー人生の曲がり角?
若いドライバーもいつかは高齢になり、運転に必要な能力が衰えます。では、運転能力が低下しはじめるのはいつごろなのでしょうか?「日本では65歳から前期高齢者とされているから、運転能力が衰えだすのは60~65歳ごろなのかな?」と、筆者は漠然と思っていました。……が、筆者の考えは間違っていて、運転能力の低下がはじまる時期はもっと早いのかもしれません。このように言うのは、次のプレスリリースを読んで「認識を改めたほうがいいのかな?」と思ったからです。
### JAFがベテランドライバー向け講習会を発表
2025年2月3日、一般社団法人日本自動車連盟(JAF)が講習会「ドライバーズセミナーシニアコース」の開催をプレスリリースで発表しました。開催地は「和歌山県警察本部交通センター」、開催日は2025年3月15日とのこと。
出典:【JAF和歌山】50歳以上のドライバー対象の実技講習会「ドライバーズセミナー シニアコース」を開催します
出典:【JAF和歌山】50歳以上のドライバー対象の実技講習会「ドライバーズセミナー シニアコース」を開催しますドライバーズセミナーシニアコースは、50歳以上のドライバーが対象の実技型講習会で、運転のクセや身体能力の変化などを参加者が自覚し、安全運転に活かせるようになることを目的としています。こうしたJAFのシニアドライバー向け講習会は、1996年から全国各地で開催されています。JAFでは30年近く前から、高齢ドライバーへの安全啓発に力を入れてきたわけですね。それはさておき、筆者が気になったのは講習会の対象年齢と目的です。講習対象が50歳以上のドライバーで、開催目的の1つが「参加者が身体能力の変化を自覚すること」。……ということは、50歳になったら運転能力の低下を気にしたほうがよいのでしょうか?
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## 50歳前後で運転能力は衰えはじめる?
運転に必要な能力には、視力や聴力のほか、運動機能、認知機能などがあげられます。認知機能で運転に関わるものは、視空間認知機能や注意力、判断力、記憶力、遂行力などです。遂行力とは、ものごとを効率的に成し遂げるために、計画したり順序立てたりする能力を指します。こうした能力は加齢により低下するわけですが、気になるのは衰えはじめる年齢ですよね。筆者が調べたところによると、諸所の能力低下が目立ちはじめるのは、やはり50歳あたりからのようです。それも視力や反射神経だけでなく、一部の認知機能もこの年齢から低下しはじめるようなのです。
### 50歳前後ではじまる認知機能低下
運転に関わる認知機能のうち、遂行力は50歳ごろから、判断力は55歳ごろから低下しはじめるようです。また、注意力は30代後半から徐々に衰えていき、50代半ばから大きく低下する傾向にあるのだとか。この一方で、視空間認知機能は50代まで向上して60代で急速に低下する、というデータもあります。「認知機能の低下」と一口に言っても、各種能力の衰え方は一様ではないようですね。また、老化の仕方には個人差があるため、運転能力が低下する度合いも人により異なると考えられます。50代ドライバーの中には、若いころとほぼ変わらない運転ができる人もいるかもしれません。とはいえ、自分の能力を客観的に正しく評価できるとはかぎりませんから、「50歳になったら運転に気を付けたほうがよさそうだな」と思っておくに越したことはないでしょう。
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## 運転能力の衰えを感じていますか?
©mapo/stock.adobe.comどうやら50歳以上になると運転能力は衰えはじめるらしい。では、シニアドライバーが感じる衰えとは、どのようなものなのでしょうか?知恵袋サイトで「ベテランドライバーのみなさん、若いころとくらべて運転能力が下がったなと感じることはありますか?」と質問してみたので、お寄せいただいたご回答を見てみましょう。
### 質問にいただいたご回答
「50代も終わりに近づき、『運転が下手になった』と妻に言われるようになりました。実際ミラーをぶつけてしまうことがありますし、広い道で少し蛇行していると感じることもあります(Kさん)」「加齢で五感が鈍ったのか、車両感覚がつかみにくくなりました。それに、バックミラーでの後方確認に時間がかかるようになりましたね。最近は将来的な免許返納も考えはじめています(Yさん)」「40代後半から反応速度が落ちたように感じます。急な割り込みとか予想外の動きをする自転車などに遭遇すると、以前より慌てるようになりました(Mさん)」「年を取って注意力が下がりましたし、動体視力も低下したと思います。いま住んでいるアメリカの街は交通サービスが充実しているので、そのうち車を運転しなくなるかもしれません(Bさん)」……という感じで、ご回答いただいたドライバー諸氏は、車両感覚や反応速度、動体視力の衰えを感じているようです。また、「反応速度が落ちた」というMさんは、若いころよりも慎重な運転を心がけているとのこと。50代になったら、意識的に運転の仕方を変えたほうがよいのかもしれません。
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## 50歳前後から意識したい運転ポイント
50歳あたりからの運転で意識したいことを調べたところ、いくつかのポイントが見つかりました。その中から特に重要といえる3点を見ていきましょう。
### 速度を抑える・車間距離を大きくとる
加齢にともない動体視力や反射神経は衰えます。50代になっても若いころと同じような運転をしていると、先行車の急停止や歩行者の飛び出しなどの、不測の事態に対処しきれないかもしれません。動体視力と反射神経の低下をカバーするには、車の速度を抑えて、車間距離を大きめにとることが肝要。ゆとりのある運転をすることで、急な状況変化や危険に対処しやすくなります。
### 視界が悪いときの運転をなるべく避ける
加齢によって視力が衰えると、暗いところで周囲が見えづらくなりますし、雨の日の運転も若いころより難しく感じるようになります。こうした変化に対処するには、夜間や雨天時などの、視界が悪いシチュエーションでの運転を避けることが肝要です。とはいえ、仕事や家庭などの事情により、夜間・雨天時の運転を避けられない人も多いはず。周囲が見えづらい状況で運転するときは、昼間より車速を落とす、ハイビームを上手く活用するといった方法で、前方の危険を早めに発見できるよう心がけるとよいでしょう。
### 正しい姿勢で運転する
50歳以上になると、脳の疲れが取れにくくなるといいます。脳疲労は交通事故の原因になりますから、この体の変化は無視できません。脳の疲れが取れにくいなら、疲労を遠ざける必要があります。そこで見直したいのが運転姿勢。シートに浅く座るクセのある人は、体を安定させるために深く腰掛けるようにしましょう。また、腕が伸び切る姿勢で運転している人は、肘が軽く曲がるようにシート位置を調整してください。これによりハンドルを回しやすくなり、体が疲れにくくなりますし、ひいては脳の疲労も抑えられます。
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## 運転の見直しが自分と交通社会を守る
筆者の家で長年お世話になっているお坊さんが先日、「もうすぐ引退するから記念にシビックタイプRを注文した」と言っていました(羨ましい!)。高齢になっても車を楽しめるっていいですよね。ちなみに、「車の運転をやめることで認知症リスクが高まる」との研究結果があります。車に乗り続けることが、老後の健康維持に役立つ場合もあるのかもしれません。とはいえ、加齢による衰えが原因で事故を起こすことは避けたいところ。いつまでも安全に楽しく車に乗り続けるためには、年齢とともに変化する自分の心身と向き合い、定期的に運転を見直す必要がありそうです。かくいう筆者も40代後半ですから、自分の能力を過信せず、今までよりゆとりある運転を心がけたいと思います。
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